【令和7年度 地域別最低賃金】答申の結果

令和7年度の地域別最低賃金の「答申」が全都道府県で出そろいました。

🔗令和7年度最低賃金額答申|厚生労働省
🔗別紙:令和7年度地域別最低賃金額答申状況|厚生労働省

東海三県の答申額は?

都道府県答申額(時給)改定前(時給)引上げ幅発効日(予定)
愛知県1,140円1,077円+63円2025年10月18日
岐阜県1,065円1,001円+64円2025年10月18日
三重県1,087円1,023円+64円2025年11月21日

今後のスケジュールとしては、都道府県ごとに異議申出の受付期間を経た上で、都道府県労働局長の決定により順次発効される予定です。

異議申出があった場合、最終的に発効日が変更される可能性があるため、都道府県の公示を注視しておく必要があります。

✅企業が今すぐやるべきチェックリスト(実務対応)

企業は、発効日に基づき実務上の賃金改定が必要です。
以下に実務で対応すべきことをリストアップしましたので、ご参考にしてください。

✅ 現状の給与と最低賃金との比較(対象者の洗い出し)

現在の時間給・日給・月給を、改定後の最低賃金と比較し、新しい最低賃金を下回る従業員がいないかを確認してください。
特に、パートタイム、アルバイト、契約社員など、時間給で働く従業員の賃金を優先的にチェックしましょう。
また、月給者や日給者であっても、以下の方法で時間給を算出し、最低賃金を下回る場合は改定が必要です。

  • 日給者:日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
  • 月給者:月給÷1ヶ月の平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

🔗最低賃金額以上かどうかを確認する方法|厚生労働省

上記リンク先では、出来高払制など、様々な賃金形態ごとの最低賃金の確認方法(計算式)が詳細に説明されています。
また、月給者の「1ヶ月の平均所定労働時間」の算出方法や、最低賃金の対象とならない賃金についても関連ページで確認できます。

その他、時給ベースで計算する一部業務委託(警備、清掃、派遣受け入れ等)がある場合、委託条件の見直しや価格交渉が必要になることがあります。

また、都道府県またぎで勤務する従業員がいる場合は、「主たる勤務地」を確認して最低賃金を下回らないか確認してください。

✅ 賃金の見直しと改定

最低賃金を下回る従業員、および最低賃金に近接している従業員の賃金テーブルや給与体系を見直し、改定後の最低賃金以上の水準に引き上げましょう。
また、給与計算システムを使用している場合は、基本時給、時間外割増の基準(深夜割増の基礎になる賃金等)等の更新が必要です。

✅ 就業規則・賃金規程の変更

就業規則(や賃金規程)に最低賃金や賃金体系が明記されている場合は、その部分を改定してください。
法令遵守の明確化(特に最低賃金法)、労使間のトラブル防止と透明性の確保のため、必ず施工日を明記しましょう。
改定後は、必要に応じて労働基準監督署への届け出てください。

✅ 従業員への周知と個別通知

賃金改定の実施時期(施工日)、改定後の賃金水準、および変更の理由について、全従業員に明確に周知してください(社内掲示、メールなど)。
特に賃金が変更になる従業員に対しては、個別に労働条件通知書(雇用契約書)を再交付または変更契約を締結し、文書で通知しましょう。

✅ 関連助成金・支援策の調査と活用

賃金引き上げを行った企業を対象とする「業務改善助成金」など、国や自治体の支援策・助成金の情報を調査し、活用を検討してください。

企業が対応すべき理由

  • 最低賃金を下回る賃金を支払うことは、最低賃金法違反となり、罰則(罰金など)の対象となります。
  • 従業員との賃金トラブルや、労働基準監督署からの是正勧告を未然に防ぎます。
  • 法律で定められた水準を満たすことで、安心して働ける環境を提供し、従業員の企業への信頼とモチベーションを維持します。
  • 賃金を適正な水準に引き上げることで、採用市場における企業の魅力を高め、人手不足の解消に繋げます。

最低賃金の改定は、単なる「人件費の増加」ではなく、「人材への投資」と捉えることが、今後の企業成長の鍵となります。
これらの対応を通じて、法令を遵守しつつ、従業員がより一層活躍できる環境を整備していきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 既に支払っている時給が答申額より高ければ何もしなくて良い?
A. 基本的に問題ありませんが、就業規則や求人票の時給表示を見直す機会にしてください(求人での表示と実際が異なるとトラブルに)。

Q. 最低賃金額は最終確定後に変わることがある?
A. 答申後に異議申出があり得るため、発効日は「予定」であり、最終的に変更される可能性があります。都道府県の公示を注視してください。

Q. 「時給を上げられない」場合の対応はどうすればよい?
A. 法律上、最低賃金を下回る時給で雇用を続けることはできません。
 以下の選択肢を検討してください。
 ・業務の効率化やシフト調整により人件費の総額を抑える
 ・雇用区分の見直し(短時間正社員制度、限定正社員などを導入)
 ・業務委託・外注の活用により変動費化を図る
 ・助成金の活用(キャリアアップ助成金や業務改善助成金)で人件費増加の一部を補う
 ただし、最低賃金を下回る設定を続けることは違法となり、是正勧告や遡及支払のリスクが生じますので、必ず法令を順守したうえで対応を検討してください。